あたしの瞳の中で虚ろに写る
貴方の赤い鮮血───・・・
そしてあたしは現実に引き戻される
馬鹿じゃないの
アンタがいなくちゃ あたしが今ここにいる、
意味がないでしょ
鎮魂曲
「・・ねぇ、目 あけなさいよ 」
傷つき、体温の失った貴方を前にあたしが問いかける
「どうして、答えないのよ 」
答える術をもたない貴方にあたしはまた問う
「どうして・・あたしを、おいてくのよ・・」
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「 いの、お前はこっから逃げろ。」
「・・な、何いってんのよ!!
1人でいって勝てる訳ないじゃない!!」
「2人で行っても同じだ。」
「そんなこと、わっかんないでしょ──!!」
「 いの 」
──ぎゅっと、暖かい貴方の体温
「・・シカマル・・」
「・・オレも後から 追いかけるから、な」
だけど そのコトバは
何故か、ぎこちなくふるえていて
「・・だから、今はお前一人で逃げてくれ。」
「・・わ、かったわよ・・でもね、シカマル 」
ここで貴方と離れたら 本当は、
もうずっと会えない気がして怖いの
「・・絶対、すぐに追いかけてきてね 」
「・・ああ、約束だ 」
貴方はそう、言ってたじゃない
約束、したじゃない
「 シカマルっ!!」
なのに どうして
こんなに傷ついて、倒れこんでるのよ
「シカマルっ!!返事しなさいよっ!!」
わたしの声が虚しく天に響く
「・・っせーな・・、いの 」
「 シカマルっ!!」
「・・つか、い の 苦しーから・・。」
──もっと優しくしろって──
苦し紛れに貴方はそう云う
──できる訳ないでしょ、アンタを抱える手に
ぎゅっと力を込めないと
あたしの体がふるえて力が入んないのよ
「・・い、の・・・?」
「・・なに、よ 」
「・・悪かった、な・・」
「・・だから、何がっ 」
「・・オレ、もうダ メっぽいわ・・」
「な、何いってんのよっ、
そんなことっ・・、あるわけないでしょっ・・!!」
「・・約 束、守れなく・・なっちまったな・・」
「・・バカっ!そういうこと・・言わないでよっ・・」
「・・冗談でも、笑えないのよっ・・」
そういって、オレの一番大切なコイツは
静かに でも必死に声を殺して涙を、流す。
流れては、落ちる
流れては、落ちる
オレのための涙
..光のしずく..
今のおれにはそれを拭ってやれる力も
アイツのためにかけてやれる言葉も見つからない
「・・泣くな、って・・」
こんなにも無力な自分に腹が立つ
それと同時にもうそこまで来てる
お前との別れが、怖くて、怖くて
「・・オレまで、泣きたくなんだろ・・」
いつまでも、ここにいたくて
いつまでも、生にしがりつこうとする
でもそれを願うことはできなくて
ずっと心臓を握られている感覚が、
オレを戒め続けて離しては、くれない
「・・あたしをおいてかないで・・
・・ずっと、一緒にいたいのよっ・・」
オレだって、ずっと一緒にいたいんだよ
「・・ねぇ、お願いだから・・死なないで 」
ダメなんだ・・それにもうお前の顔もよく見えてねんだ・・
「・・明日は一緒に買い物にいく約束だって
・・前から、してたじゃないっ・・ 」
「・・ねぇ、シカマルっ 答えなさいよっ!!」
「・・ご、めんな・・、いの・・」
「・・やだっ・・、ちょっとっ!!シカマルっ」
オレは、ここに・・・
・・一番 大切なモノをおいてゆく・・
「・・オ・・レ、お前のこと・・すきだったんだ・・」
──ずっと伝えたくて、でもずっと言えなかった言葉──
「・・知ってんのよ・・、そんなこと・・」
「・・はは・・、オレのキモ・・チはバレバレって訳ね・・」
「・・どうせあたしのキモチも、知ってんでしょ・・?」
「・・・まあ・・な・・。」
「・・全く・・、言うのが・・遅いのよ・・。」
ふわっと花の匂いがして、暖かい体温に包まれる
「・・・シカマル、ねぇ・・寒いの・・?」
そんな心地よい空間のなかにいると
「・・冷たくなったり、しないでよ・・」
何故かオレは、無性に眠くなってきて、
「・・ご、めん・・何かオレ、眠くなってきたかも」
「・・だめよ・・あたしをおいて寝ちゃうつも、り・・?」
いまここで眠れば もうこの世界に居られないことは分かってた
「・・でもここで寝れるなら、いいかもな」
「・・な にいってんのよ・・、バカマル・・」
「・・すき、だよ・・い の・・」
貴方はそう一言、あたしに言い残してもう覚めることのない夢をみる
「・・あ、たしもすきよ・・っ」
そうしてあたしは消えることのない想いを最愛の貴方に刻まれる
... いの ずっと、側にいてやれなくて悪かったな ...
..でも この想いだけは ずっと ずっと ..
・・・ お前と一緒だから ・・・
END ・・鎮魂曲・・
**涼宮 柚茄**